京都 蔵丘洞画廊

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絵と人に出逢う

2007年1月5日

お正月に司馬遼太郎の『微光の中の宇宙』(中央公論)を読んだ。新聞の美術記者をしていた頃の若き日の氏が美術の変遷とその理論武装した美術観にとらわれて、美術がとても遠いところに行ってしまっていた。

4年にわたる記者生活を辞めてから『絵を見て自由に感動できるようになった』と述べている。 もう少し彼の言葉を紹介すると『これに感動するのは自分自身が間違っているのではないか』 という自問が氏を拘束した。『19世紀以後の美術は理論の虚喝が多すぎた。私自身、危うくその魔法に絡めとられかけ、やっと逃げ出したものの、自分だけの裸眼で驚きを見つけていくことについては、遅々としている。』とかかれている。

日本人はまじめに学習することが好きだ。近頃は、自分流も大切との自己満足を胸に仕舞いながら、みなと同じようなブランドに身を包み横目づかいで生きている。 美術展も絵の知識があるとか、皆が行くからじゃなくて、一人でぶらりと立ち寄ってほしい。

実のところそんな人がつぶやく『こんな絵嫌い』の一言が楽しみ。驚きや感想を持つことがいい。だって私は多くの人が『いいですね』と微笑んでくれた作品は決して売れないことを知っているから。

文責 岡 2007.1.5